Research|細胞情報科学分野

主として骨髄由来間葉系幹細胞や口腔組織由来癌細胞における生命現象を細胞内シグナル伝達系を中心とした分子レベルで解析している。 2011年より 未来医療開発プロジェクト に参画し、 医歯薬学における先進・先端的研究を目指している。 過去に参画したプロジェクト: Hi-tech Research ProjectOpen Research Project ⇒ 詳細は 先進歯科医療研究センタ− のホームページへ


未分化間葉系細胞の増殖・分化誘導メカニズムの解明

【1】間葉系幹細胞(MSC)は骨、軟骨、脂肪などに分化する再生医療への応用が期待される臓器由来幹細胞である。 MSCなどの臓器由来幹細胞を再生医療に用いるための基本的な方法は、体外に取り出してから細胞培養を実施して幹細胞数を増やした後に体内へ移植して利用することである。 しかし、一般的にex vivoでの細胞分裂を繰り返す毎に増殖能、分化能、移動などの幹細胞性は失われて行く。 今回我々は、MSCの骨芽細胞分化に伴いその発現が減少するリガンド/受容体に注目して研究を進め、MSCの増殖時に幹細胞性を維持する新たなシグナル系SCRG1/BST1の発見に成功した。 一方、MSCの幹細胞性を維持するために働く細胞接着因子VCAM-1の発現には、N-Cadherinからの血小板由来成長因子(PDGF)受容体を介したシグナルが重要であることも明らかとした。 これらの研究は、MSCをex vivoで細胞密度を高く播種して増殖させることと同時に、SCRG1/BST1からの刺激を与えることにより、 幹細胞性の高いMSCを大量に調製可能とする新技術として注目されている。

【2】トランスフォーミング増殖因子(TGF)-βスーパーファミリーや線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリーをはじめとした 各種成長因子による細胞内シグナル伝達とそれにより誘導される遺伝子発現が、 どのようにMSCの幹細胞様能力発現に関わるかについて明らかにすべく研究を進めている。 最近では、MSCの増殖と骨芽細胞分化にはPDGFとTGF-βとの相互作用による調節機構が存在することを明らかとした。 すなわち、PDGFによるシグナルがMSCの増殖を誘導する一方、TGF-βはそのPDGFによる増殖促進効果を阻害することを明らかとした。 加えて、PDGFによるPI3Kを介したシグナルはTGF-βによるMEKを経由したシグナルによるMSCの骨芽細胞への分化を増強することが判明した。 本研究は、MSCを利用した効率的な骨形成療法を実現するための研究成果として注目される。

【3】我々は以前に、歯周靭帯には血管内皮細胞前駆細胞(EPC)が存在し、in vitro三次元培養下で血管形成することを発見し報告している。 加えて我々は、この細胞が血管内皮細胞分化に加え線維細胞(myofibroblast)分化をする能力を持つ幹細胞様細胞であることを見出した。 さらに、最近の調査により、歯周靭帯に存在する上皮成長因子(EGF)がこの歯周靭帯由来EPCの増殖をERKやJNKを介して促進することを明らかとした。 また、EGFがEPCの伸展刺激により誘導される線維細胞分化をERK依存的に抑制することを明らかとした。 このEGFによるEPCの線維細胞分化の調節機構は、細胞骨格構成分子α-SMAの転写レベルでの制御によるものである可能性が示唆された。 本研究成果により、歯科矯正治療による歯の移動時の伸展側歯周靭帯にみられるI型コラーゲン組織のリモデリング機構には、 EPCから線維細胞への分化を制御するEGFが重要な働きを担うことが示唆された。


    

骨髄由来間葉系細胞のホーミングならびにその増殖・分化調節メカニズムの解明

我々はこれまでに、赤色蛍光強発現トランスジェニックマウスの骨髄由来MSC(BM-MSC)が、in vitroで多分化能力を維持しながら増殖する至適条件を明らかとした。 現在、この赤色蛍光強発現BM-MSCのin vivoにおける各組織へのホーミング能力ならびに増殖・分化能力について調査しているところである。 また最近、BM-MSCはその多分化能力に加え、免疫調節能力を備えていることが報告されている。 このMSCによる免疫調節能力は、組織再生に働くのみならず、炎症の抑制効果や腫瘍形成に関わるとされているが、 そのin vivoにおける調節作用の詳細は明らかとされていない。我々は、各疾患の発症に関わるMSCとその他の細胞との相互作用について、 in vivo移植した赤色蛍光強発現MSC周囲の微小環境を細胞レベルや分子レベルで詳細に調査することにより明らかとしたく各研究を進めているところである。


    

口腔由来癌細胞のTGF-βによる上皮間葉転換機構の解明

TGF-βは、細胞の増殖抑制因子であるが、細胞基質の産生や免疫抑制、血管新生、上皮間葉転換(EMT)などを起こす事から、癌化や癌の重症化にも関与している。 我々は、口腔扁平上皮癌細胞のHSC-4細胞が、TGF-β刺激に応答したSlugの発現の増加により上皮間葉転換を誘導されると共に、 細胞外マトリックスタンパク質の分泌の増大によりIntegrin α3β1/FAKの経路を活性化して遊走能を増加させることを明らかとした。 現在、このEMTにより誘導される細胞の浸潤・転移に関わる細胞内シグナルを明らかにすべく調査を行っている。


口腔扁平上皮癌細胞の浸潤・転移の分子メカニズム

アノイキスは上皮細胞における足場依存的なアポトーシスであり、上皮由来癌細胞の転移には、このアノイキスを回避するシステムが働いている。 そこでヒト口腔扁平上皮癌細胞におけるアノイキス関連因子の解析を行っている。 これまでに、ある種のレクチンタンパク質がアノイキスを抑制する因子であることが示されている。 現在この分子がアノイキスを抑制するシステムを解析するために、相互作用するタンパク質の同定を行い、細胞内シグナル伝達システムの解析を試みている。 ⇒ 研究内容の詳細 [PDF]


顎下腺由来腺癌細胞株のアポトーシスシグナル伝達機構

分子シャペロン HSP90 は多くの情報伝達分子と結合して細胞内シグナル伝達を制御しており、癌細胞の存続にも重要な役割を担っていると考えられている。 このことから HSP90 は癌治療における分子標的治療のターゲットとしての期待も高い。これまでに HSP90 の特異的阻害剤であるゲルダナマイシンが、 口腔癌細胞のデスレセプター依存性アポトーシスを増強することを明らかにしてきた。現在、ゲルダナマイシンのアポトーシスシグナルへの作用点を明らかにするために、 HSP90 と相互作用するアポトーシス関連分子の検索・同定を進めている。 ⇒ 研究内容の詳細 [PDF]


顎下腺由来腺癌細胞株のプロテオミクス

細胞で発現しているタンパク質を網羅的に同定するプロテオーム解析を、様々な口腔由来癌細胞において実施している。 これまでに顎下腺由来腺癌細胞株(HSG 細胞)のプロテオーム解析を行い、データベースを構築している。 現在、いくつかの扁平上皮癌由来細胞株においてプロテオーム解析を行っており、 蓄積されたデータを基に口腔癌細胞の浸潤・転移やアポトーシスの分子機構を解明するためのターゲット分子を検索している。 ⇒ 研究内容の詳細 [PDF]Two-Dimensional Electrophoresis Database of HSG cells proteins


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